伊勢神宮外宮の境内にある風宮は、風雨を司る級長津彦命と級長戸辺命を祀る、静謐な別宮です。古くは「風社」と呼ばれ、多賀宮への参道沿いにひっそりと佇む小さな社でしたが、その歴史は想像を超えるドラマを秘めています。
基本情報
- 所在地: 三重県伊勢市豊川町
- 祭神: 級長津彦命(しなつひこのみこと)、級長戸辺命(しなとべのみこと)
- 社格: 豊受大神宮別宮
- 創建: 997年以前(正確な創建時期は不明)
元寇と神風伝説~別宮昇格の奇跡~
風宮が別宮として格上げされた背景には、1281年(弘安4年)の襲来、そして1293年(正応6年)の別宮昇格という劇的な歴史があります。元寇の際、朝廷から派遣された勅使が風宮(当時風社)で必死に祈願を行いました。そして、まさに神風のご加護か、襲来した元軍は退却を余儀なくされたのです。この奇跡的な出来事が、風宮の別宮昇格へと繋がったと伝えられています。この神風は、風宮のご祭神である級長津彦命と級長戸辺命の御神威によるものと信じられ、以来、風宮は航海安全や農作物の豊作だけでなく、国家安泰をも祈願する聖地として崇められるようになりました。
静寂に包まれた社と、その周辺の神秘
風宮は、外宮正宮南方の檜尾山(ひのきおやま)の麓に位置し、多賀宮への参道にある亀石を渡った先にあります。この亀石は、高倉山の天岩戸の入り口の岩を運んだと伝えられ、風宮への参道にふさわしい神聖な雰囲気を醸し出しています。境内は静寂に包まれ、参拝者も少なく、神様と深く繋がる時間を過ごすことができます。杉木立に囲まれた小さな社は、その佇まいから、古来より人々の信仰を集めてきた歴史を感じさせます。
風宮と風日祈宮~不思議な繋がり~
興味深いのは、風宮と内宮の別宮である風日祈宮が、同じ級長津彦命と級長戸辺命を祀っている点です。両社は、風雨を司る神として、古くから人々の生活に深く関わってきたと考えられています。元寇の際、両社で祈願が行われたという記録も残っており、風宮と風日祈宮は、日本を守る守護神として、強い結びつきを持っていると言えるでしょう。
今もなお続く信仰~農業と航海の守護神~
風宮では、今もなお風日祈祭が行われ、農作物の豊作が祈られています。かつては航海安全の守護神としても崇められており、海に囲まれた日本の歴史において、風宮が果たしてきた役割の大きさを伺い知ることができます。
風宮は、歴史と神秘に満ちた、静かで神聖な場所です。伊勢神宮を訪れた際は、ぜひ風宮にも足を運び、その神聖な空気に触れてみてください。きっと、忘れられない体験となるでしょう。
関連リンク・参考文献
[1] 風宮 – Wikipedia
[2] 風宮(かぜのみや)参拝レポート 〜 伊勢神宮外宮の境内にある別宮はその名のとおり風の神様だった!! [2023年3月 伊勢・名古屋の旅 その4] – No Second Life
[3] 風宮(豊受大神宮別宮) | 公益社団法人 伊勢市観光協会
[4] 風宮〈豊受大神宮(外宮)の境内 別宮〉〈お伊勢さん125社〉 – Shrine-heritager
[5] 風日祈宮 (皇大神宮別宮) | かむながらのみち ~天地悠久~
[6] 『唯一無二の聖域,伊勢神宮へ(1) ~内宮,外宮特別参宮 ~』伊勢神宮(三重県)の旅行記・ブログ by ぺこにゃんさん【フォートラベル】
[7] 伊勢神宮を知る | 観光特集 | 伊勢志摩観光ナビ – 伊勢志摩観光コンベンション機構公式サイト