東京都台東区上野公園に鎮座する五條天神神社。正式には菅原神社と称しますが、「上野天神」として親しまれ、江戸三大天神、東都七天神の一社にも数えられています。菅原道真公を祀る天神様として有名ですが、その歴史は意外にも菅原道真公とは別の神様から始まります。
医薬祖神と菅原道真公の邂逅
創建は景行天皇の御代(110年頃)と伝えられ、日本武尊が東夷征伐の際に、医薬祖神である大己貴命と少彦名命の加護を受けたことに感謝し、祀ったのが始まりです。 大己貴命は、大国主命としても知られる、神話にも登場する有名な神様。少彦名命は、薬の術やお酒の作り方を伝えた神様として信仰を集めています。 つまり、五條天神神社は、学問の神様である菅原道真公を祀る神社というよりは、古くから人々の健康を祈願する神社として存在していたのです。
江戸時代初期の寛永18年(1641年)、菅原道真公が合祀されました。これは、寛永寺(現在の上野恩賜公園の大部分を占めていた)の境内拡張に伴う遷座と関係があると考えられています。 それまで瀬川家の屋敷内にあった神社は、幾度かの遷座を経て、昭和3年に現在の場所に落ち着きました。 この合祀によって、五條天神神社は学問の神様としての側面も持つようになり、より多くの人々から信仰されるようになりました。
歴史の息吹を感じる境内
境内には、江戸時代に寛永寺の境内各門に祀られていたと伝わる七福社があります。また、3年に一度行われる大神輿御渡は、千貫神輿と呼ばれる巨大な神輿が練り歩く壮観な祭りです。 さらに、隣接する花園稲荷神社も、五條天神神社と一体となって、上野公園の静寂の中に神聖な雰囲気を醸し出しています。
上野天神祭とユネスコ無形文化遺産
五條天神神社の例大祭である上野天神祭は、約120kgにも及ぶ巨大な大御幣や、大鬼・小鬼の仮装行列など、独特の賑やかさで知られています。この祭りは、ユネスコ無形文化遺産に登録されており、その歴史と伝統の深さを物語っています。 俳聖・松尾芭蕉もこの神社に「貝おほひ」を奉納したと伝えられており、文人墨客にも愛された場所であったことが伺えます。
現代に繋がる信仰
現在でも、五條天神神社は病気平癒や健康祈願、学業成就など、多くの参拝者から信仰を集めています。 上野公園という立地も相まって、多くの人が気軽に訪れ、歴史と自然に囲まれた空間で、静かな時間を過ごすことができます。 上野公園を訪れた際には、ぜひ五條天神神社に立ち寄り、その歴史と神聖な空気に触れてみてください。 きっと、新たな発見と感動が待っているはずです。
関連リンク・参考文献
[1] 五條天神社 / 東京都台東区 | 御朱印・神社メモ
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