秋田県仙北郡美郷町六郷に鎮座する秋田諏訪宮。通称「おすわさま」として親しまれるこの神社は、悠久の歴史と数々の伝説、そして不思議なエピソードを秘めた、魅力あふれる場所です。
基本情報
- 正式名称: 秋田諏訪宮(あきたすわぐう)
- 所在地: 秋田県仙北郡美郷町六郷字本道町19
- 祭神: 建御名方富命(たけみなかたとみのみこと)、八坂刀女命(やさかとめのみこと)他
- 旧社格: 県社
- 現在: 神社本庁別表神社
創建と歴史:坂上田村麻呂と後三年の役の影
社伝によれば、秋田諏訪宮は延暦21年(802年)、征夷大将軍・坂上田村麻呂が信濃国の諏訪大神を奉じて東征の際、国家鎮護を祈願して創建したと伝えられています。しかし、田村麻呂自身は秋田県内に足を踏み入れていないという説が有力です。このため、創建は陸奥・出羽両国の城柵造営政策の一環として、副将軍の文室綿麻呂が関わった可能性も指摘されています。
創建当初は払田柵の南方にあったと推測されますが、その後金沢に移転。後三年の役(1083~1087年)では、信濃国諏訪大祝為仲が当地で祭祀を行い、凱旋後に一男子を遺して宮司家としたと伝えられています。以降、宮司家は代々「諏訪(諏方)祝子」を称しました。
鎌倉時代には、相模国鎌倉の諏訪家から諏訪宗治が下向し、11代目の宮司となります。以降、宮司家は六郷氏(二階堂氏)と共に地域の発展に貢献しました。関ヶ原の戦いでは、宮司は六郷氏の出陣に同行せず、神職専一となりました。
江戸時代には、佐竹義重による社殿造営などもあり、六郷の総鎮守として信仰を集めました。明治時代には明治天皇の東北巡幸の際に、宮司宅が御小休所として使用されたという歴史も持ちます。
昭和62年(1987年)に「秋田諏訪宮」を正式名称としました。
ミステリーと伝説:六郷のカマクラ行事
秋田諏訪宮には、数々の伝説や興味深いエピソードが残されています。特に有名なのが、小正月の特殊神事「六郷のカマクラ行事(竹打ち)」です。この行事は、国の重要無形民俗文化財に指定されており、独特の雰囲気と神秘的な魅力で多くの人々を惹きつけています。
また、境内には庚申塔や境内社が多数あり、古くから地域の人々の信仰を集めていたことが伺えます。本殿の妻側には鳳凰の彫刻など、見どころも満載です。
謎めいた社名表記
「すわ」という表記は、「須波」「諏訪」「諏方」など、時代や記録者によって様々です。社名も「諏訪明神」「諏訪大明神」「西諏訪大明神」「諏訪社」「諏訪神社」「諏訪宮」「秋田諏訪宮」など、多様な表記が見られます。これは、神社の歴史の長さと、地域の人々の信仰の深さを象徴しているのかもしれません。
アクセス
JR大曲駅から羽後交通バスで約20分、「六郷大町」または「六郷上町」バス停下車、徒歩5分。
秋田諏訪宮は、歴史、伝説、そして神秘的な雰囲気を併せ持つ、魅力的な神社です。訪れる際には、その歴史と文化に触れ、静寂の中で神聖な空気を体感してみてください。
関連リンク・参考文献
[1] 諏訪愛宕神社の端午祭 | 二〇世紀ひみつ基地
[2] 初鹿野諏訪神社 御神木 – 触れると祟る朴の木
[3] 秋田諏訪宮
[4] 秋田諏訪宮とは – わかりやすく解説 Weblio辞書
[5] 秋田諏訪宮 – 神が宿るところ
[6] 御由緒 年表|秋田諏訪宮(公式ウェブサイト)
[7] 秋田諏訪宮(諏訪神社)
[8] 神社と社家の歴史|秋田諏訪宮(公式ウェブサイト)