神奈川県茅ヶ崎市に鎮座する鶴嶺八幡宮は、相模国茅ヶ崎の総鎮守として古くから八幡信仰の中心地として知られています。その歴史は古く、平安時代後期、1030年(長元3年)に源頼義が下総の乱を鎮圧した際に、京都の石清水八幡宮を勧請して創建された懐島八幡宮に始まります。ただし、宇佐神宮を勧請したという説もあります。
その後、1051年(永承6年)の前九年の役では、頼義の子である源義家が戦勝祈願を行い、1089年(寛治3年)には義家によって現在の地である浜之郷に遷座され、鶴嶺八幡宮と名付けられました。 源頼朝も深く関わり、領地を寄進し社殿の修復にも尽力したと伝えられています。
鎌倉時代には源氏一族の厚い信仰を集め、源頼朝による社殿修復や、蒙古襲来の際には退散祈願が行われたなど、歴史の大きな転換期に重要な役割を果たしたとされています。しかし、1590年(天正18年)の小田原北条氏滅亡後には荒廃。1649年(慶安2年)に徳川幕府から七石の領地を与えられ、別当寺常光院の朝恵によって社殿が修復され、現在の参道の松並木もこの時に植えられたと伝えられています。この松並木は茅ヶ崎市の史跡、松は天然記念物に指定されています。
見どころと伝説:
- ご神木の大銀杏: 樹齢約1000年と伝えられる巨木は、源義家が遷座した際に植えたものとされ、神奈川県指定天然記念物です。その圧倒的な存在感は、訪れる人の心を惹きつけます。
- 参道の松並木: 約760m続く松並木は、歴史を感じさせる荘厳な雰囲気を醸し出しています。
- がん封じ石: 願い事を念じながら石を撫でると病気が治り、願いが叶うと伝えられる「女護が石」は、女性の守護神として信仰されています。他にも「がん封じ」の霊石があり、神明大神宮にある兄弟石と合わせて撫でると、より効果があるとされています。
- 弁慶塚: 源頼朝が相模川の橋供養の帰りに落馬した際、源義経や源行家の亡霊が現れたという伝説が残る場所です。近くにある龍前院には、落馬の責任を取って自害した警護の者10名の墓とされる10基の五輪塔があります。
- 浜降祭: 茅ヶ崎を代表する夏祭りで、鶴嶺八幡宮から神輿を海まで運ぶ、古くから続く伝統行事です。寒川神社の神輿が台風で流された際に、茅ヶ崎の網元が拾い上げたことが起源という説もあります。
- 南湖の左富士: かつて東海道から見える富士山を、歌川広重が浮世絵に描いたことで知られる茅ヶ崎の名所です。鶴嶺八幡宮の参道からもその景色を望むことができます。
アクセス:
JR東海道本線茅ヶ崎駅北口からバス乗車、「鶴嶺小学校前」下車、徒歩1分。
鶴嶺八幡宮は、源氏ゆかりの歴史と、数々の伝説、そして自然豊かな境内が魅力の神社です。茅ヶ崎を訪れた際は、ぜひ足を運んでみてください。 神聖な空気に包まれ、心安らぐひとときを過ごせることでしょう。
関連リンク・参考文献
[1] 鶴嶺八幡宮の歴史と見どころ〜源氏の氏神:茅ヶ崎市〜
[2] 歴史 – 鶴嶺八幡宮 |八幡信仰の本地「湘南茅ヶ崎鎮守」
[3] 鶴嶺八幡宮(神奈川県茅ヶ崎市)探訪記 | 武蔵と相模の史蹟探訪記
[4] 鶴嶺八幡宮 – Wikipedia
[5] 茅ヶ崎のパワースポット!ご利益いっぱい鶴嶺八幡宮の見どころをご紹介 | たびらい観光情報
[6] 鶴嶺八幡宮(茅ヶ崎市)は源氏にゆかりの神社です | 湘南える新聞社