下谷神社:都内最古の稲荷神社、寄席発祥の地、そして横山大観の龍

東京都台東区東上野に鎮座する下谷神社は、都内最古のお稲荷様として知られる歴史深い神社です。奈良時代、天平二年(730年)に上野の忍ヶ岡(現在の上野公園付近)に創建されたと伝えられており、古くは「下谷稲荷社」や「下谷稲荷明神社」と呼ばれ、地域の人々から厚い信仰を集めてきました。

歴史と伝説:

  • 創建と遷座: 創建当初は上野公園付近に鎮座していましたが、寛永四年(1627年)に寛永寺の建立に伴い、現在の岩倉高校付近に移転。その後、延宝八年(1680年)に現在の浅草通り沿いに遷座しました。この移転劇には、土地の狭さや、周辺の武家屋敷との関係など、様々な事情が絡んでいたと考えられます。
  • 平将門と藤原秀郷: 天慶三年(940年)、平将門の乱を鎮めた藤原秀郷が、戦勝祈願のため下谷神社に参拝し、その後社殿を造営したという伝説が残っています。この伝説は、神社の歴史における重要な出来事として語り継がれ、藤原秀郷ゆかりの神社として、他の神社との繋がりも示唆しています。
  • 寄席発祥の地: 寛政十年(1798年)、初代・三笑亭可楽によって境内において初めて寄席が開かれたとされ、「寄席発祥の地」として知られています。江戸時代の庶民文化を象徴する寄席が、この神社から始まったという事実は、下谷神社の歴史に華を添えるエピソードと言えるでしょう。境内にはその歴史を伝える石碑も建立されています。
  • 関東大震災と復興: 関東大震災では社殿が焼失しましたが、昭和三年(1928年)に現在地に移転し、昭和九年(1934年)に現在の社殿が完成しました。東京大空襲でも被害を受けなかったという逸話も残っており、神社の強靭な生命力を感じさせます。

見どころ:

  • 横山大観の龍の天井絵: 拝殿の天井には、近代日本画壇の巨匠・横山大観が描いた見事な龍の天井絵があります。その迫力と繊細さは、訪れる人々を魅了し、神社の荘厳さを一層引き立てています。
  • 朱色の大きな鳥居: 浅草通り沿いに建つ朱色の大きな鳥居は、下谷神社のシンボル的存在。その鮮やかな朱色は、参拝者を迎える力強い存在感を放っています。
  • 隆栄稲荷神社: 境内社である隆栄稲荷神社は、火災除けのご利益があるとされ、多くの人々から信仰を集めています。関東大震災で社殿が焼失する中、火災を免れたという逸話も残っています。
  • 下谷神社大祭: 毎年5月11日前後の土・日曜日に開催される例大祭は、「江戸の祭りは下谷から」と言われるほど、東京下町で最も古い夏祭りとして知られています。盛大な神輿渡御は、地域の人々の信仰の深さを示す象徴的なイベントです。

アクセス:

東京メトロ銀座線稲荷町駅、JR上野駅などから徒歩圏内に位置し、アクセスも良好です。浅草通り沿いにあり、大きな朱色の鳥居が目印です。

まとめ:

下谷神社は、都内最古のお稲荷様として、長い歴史と数々の伝説、そして横山大観の龍の天井絵など、多くの魅力を兼ね備えた神社です。歴史と文化、そして信仰が交錯するこの地を訪れ、その神秘的な雰囲気と歴史の重みを感じてみてはいかがでしょうか。

関連リンク・参考文献

[1] 下谷神社 / 東京都台東区 | 御朱印・神社メモ
[2] 下谷神社 – Wikipedia
[3] 下谷神社裏の5軒長屋《上野の古民家総ざらい》⑤ | †PIAS† isn’t anything
[4] 下谷神社

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