伊丹の氏神、猪名野神社:歴史と伝説に彩られた聖域

兵庫県伊丹市宮ノ前に鎮座する猪名野神社は、伊丹の氏神として古くから崇敬を集める神社です。その歴史は古く、延喜4年(904年)に尼崎市の猪名寺から現在地に移されたと伝えられています。創建以前は「野宮」「天王宮」「牛頭天王宮」などと呼ばれ、神仏分離の明治2年(1869年)に現在の名称となりました。

悠久の歴史と数々の出来事

猪名野神社の歴史は、数々の歴史的出来事と深く関わっています。

  • 鎮西八郎為朝との関わり: 久安6年(1150年)、源為朝が一時滞在し、神社を再興したと伝えられています。以来、伊丹氏をはじめとする武門からの崇敬が厚かったようです。
  • 有岡城との関係: 戦国時代には、荒木村重の居城である有岡城の惣構え北端に位置し、「岸の砦」が置かれていました。境内の一部は有岡城跡として国の史跡に指定されており、神社と城の深い繋がりを感じさせます。天正年間(1573~1591年)の荒木村重の乱では、社殿が焼失する被害を受けました。
  • 近衛家の庇護: 寛文元年より伊丹は近衛家の所領となり、貞享2年(1685年)には近衛基熙によって本殿、玉垣、幣殿が再建されました。現在の社殿はこの時の建築と伝えられています。
  • 神仏分離と改称: 明治2年(1869年)の神仏分離令により、野宮牛頭天王から猪名野神社と改称されました。

境内に見る歴史の痕跡

広大な境内には、歴史を感じさせる数々の建造物や遺構が残されています。

  • 本殿、幣殿、拝殿: 令和2年(2020年)3月には、本殿、幣殿、拝殿が兵庫県指定重要有形文化財に指定されました。貞享2年(1685年)の再建以降、大切に受け継がれてきた建築様式は必見です。
  • 石灯籠: 酒造家や商人の寄進による98基もの石灯籠が境内を彩り、伊丹の豊かな歴史と繁栄を物語っています。最古のものは寛永20年(1643年)の銘があります。
  • 鬼貫句碑: 伊丹出身の俳人・鬼貫の句碑が境内西側に建立されています。
  • 有岡城「岸の砦」跡: 境内北側と西側には、有岡城の土塁と堀跡が残っており、戦国時代の歴史を今に伝えています。

伝説とミステリー

猪名野神社には、いくつかの伝説やミステリーも伝えられています。

  • 鯉石: 文化年間(1804~1818年)に、耕作中に発見された鯉の姿をした石。龍の化身ではないかとされ、弁天池に放たれたという伝説が残っています。現在、伊丹市博物館に展示されています。
  • 「お渡り」の祭事: 元禄16年(1703年)から昭和30年代まで行われていた盛大な神幸祭「お渡り」は、猪名寺と伊丹の深い繋がりを示す歴史的行事でした。その様子は、市の指定文化財「猪名野神社神幸絵巻」に描かれています。

アクセスと情報

猪名野神社は、JR福知山線伊丹駅から徒歩約12分、阪急伊丹線伊丹駅から徒歩約8分とアクセスも良好です。広大な境内を散策し、歴史と自然に包まれた静寂な空間を満喫してみてはいかがでしょうか。 神社の公式ウェブサイトやSNS等で、最新のイベント情報などを確認することをお勧めします。

関連リンク・参考文献

[1] 猪名野神社
[2] 猪名寺廃寺周辺の歴史について
[3] 猪名野神社
[4] 猪名野神社 | みー散歩~神社仏閣御朱印めぐり~
[5] 兵庫県 (伊丹市) 猪名野神社 | みぞかつのぶらり散歩
[6] 猪名野神社は荒木村重の有岡城「岸の砦跡」広々してる/伊丹市 – いけだより♪
[7] 猪名野神社 | 観光スポット | ぐるっとおでかけ阪神北 宝塚市・伊丹市・三田市・川西市・猪名川市
[8] 【猪名野神社】アクセス・営業時間・料金情報 – じゃらんnet
[9] 鯉石 – 土中より掘り出された魚の不思議

By ando