埼玉県川口市元郷1丁目、静かな住宅街に鎮座する元郷氷川神社。正式名称は「氷川神社」ですが、多くの氷川神社と区別するため、地名を冠して「元郷氷川神社」と呼ばれています。室町時代後期、この地を治めていた岩槻方の武将、平柳蔵人が、さいたま市大宮区にある武蔵國一宮氷川神社を勧請して創建しました。平柳氏は平柳領十五ヶ村を治めており、元郷はその中心地。平柳蔵人は領地の安寧を祈願し、自身の館を構える元郷に社を建てたのです。以来、数百年もの間、地域の人々の鎮守神として崇敬を集めてきました。
主祭神は素盞嗚尊(すさのおのみこと)と市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)の二柱。 父娘神であることから、子宝成就・子孫繁栄の神として信仰を集め、「しあわせの宮」とも称されています。子宝を願う人々にとって、まさに希望の光を灯してくれる聖地と言えるでしょう。
歴史と伝説:水難を逃れた遷座
創建当初は荒川の堤の近くにありましたが、度重なる洪水被害を避けるため、元和8年(1622年)に現在の地へ遷座されました。この遷座劇は、神社の歴史に深く刻まれた出来事であり、人々の信仰の深さを物語っています。もしかしたら、かつての社地には、今もなお、水の神霊が宿っているのかもしれません。
見どころ:鋳物師の技が光る天水桶
境内には、川口の特産品である鋳物で作られた天水桶があります。これは、1964年東京オリンピックの聖火台を制作した伝説の鋳物師、鈴木文吾氏の最初の作品と言われています。その精緻な造形は、まさに職人技の粋を集めた逸品。天水桶をじっくりと眺めることで、歴史と伝統を感じることができるでしょう。
御朱印と年中行事:毎月変わる花の添え印
近年人気を集めている御朱印は、毎月変わる花の添え印が特徴。可愛らしいデザインで、コレクター心をくすぐります。また、7月には神燈祭・七夕まつりが開催され、昔ながらの火おこし体験などを通して、火の大切さや危険性を再確認する機会となっています。冬至には、境内産の柚子に神社の焼き印を押して参拝者に配布し、無病息災を祈願するなど、地域に密着した活動も盛んです。
子宝成就祈願の勾玉守
子宝成就祈願の御守として、勾玉守が人気です。夫婦でそれぞれ命の元となる息を吹きかけ、交換して肌身離さず持つことで、安産・子孫繁栄を祈願します。勾玉は赤ちゃんの初期の胎児の形に似ているという言い伝えがあり、その形にも意味が込められています。
その他
境内には、安産に霊験があるとされる狛犬や、子供の手形を押せるもみじ絵馬など、見どころが満載です。静かな住宅街に佇む元郷氷川神社は、都会の喧騒を忘れ、心穏やかに過ごせる癒やしの空間です。子宝を願う方だけでなく、日々の生活に疲れた方にも、ぜひ訪れていただきたい場所です。
関連リンク・参考文献
[1] 元郷氷川神社 – 川口市/埼玉県 | Omairi(おまいり)
[2] 元郷氷川神社 | SR社員がお届け!沿線とっておき情報 | えすあーるタウン情報 | 埼玉高速鉄道
[3] 御由緒/御祭神 | しあわせの宮 元郷氷川神社
[4] 境内案内 | しあわせの宮 元郷氷川神社