太皷谷稲成神社:願望成就の霊験あらたかな「お稲成さま」

島根県鹿足郡津和野町に鎮座する太皷谷稲成神社は、通称「津和野のおいなりさん」として親しまれる、歴史と神秘に満ちた神社です。日本五大稲荷の一つに数えられ、出雲大社に次ぐ島根県内第二位の年間参拝客数を誇ります。鮮やかな朱色の社殿と、約1000本の朱塗りの鳥居が連なる参道は、訪れる人々の心を魅了します。

歴史と伝説:

安永2年(1773年)、津和野藩7代藩主・亀井矩貞公が、藩と領民の安寧を祈願して京都伏見稲荷大社から勧請したのが始まりです。当初は三本松城(津和野城)の鬼門にあたる太皷谷の峰に創建されました。 興味深いことに、この神社では「稲荷」ではなく「稲成」と表記されています。その由来として、次のような伝説が語り継がれています。

ある時、お城の蔵番が蔵の鍵をなくしてしまい、お殿様に七日間の猶予を与えられました。途方に暮れた蔵番は、お稲成さまに内緒で七日間祈り続けました。そして七日目、なんと失くした鍵が自宅の鍵の近くに現れたのです。正直に全てを報告した蔵番を許したお殿様は、お稲成さまの霊験あらたかな神威を称え、「稲成神社」と改称したと言われています。この伝説から、太皷谷稲成神社は願望成就の神様として広く信仰を集めています。

さらに、境内には「命婦社」と呼ばれるお社があり、古くから京都の伏見稲荷大社に通じるとの伝説が残っています。命婦とは、古くは高位の女官や官人の妻を指し、ここでは稲荷大神の使いである狐の異称として親しまれています。命婦社では、特別な霊験が期待できるとされています。

見どころ:

  • 千本鳥居: 約1000本の朱塗りの鳥居が続く参道は、圧巻の光景です。鳥居をくぐり抜けながら、神聖な空気に包まれる体験ができます。
  • 朱色の社殿: 鮮やかな朱色の社殿は、美しく荘厳な雰囲気を醸し出しています。
  • 元宮: 現在の本殿が建立される以前の社殿で、今も分霊が祀られています。
  • 新殿裏奉拝所: 新殿の背後にあるひっそりとした場所。稲荷信仰では、ご祭神は本殿の背後から出入りすると伝えられています。
  • 命婦社: 稲荷大神の御眷属である狐を祀るお社。伏見稲荷大社に通じるとの伝説があります。

参拝方法:

太皷谷稲成神社では、「四ケ所参り」と呼ばれる参拝方法が推奨されています。新殿、元宮、命婦社、そして新殿裏奉拝所の四ヶ所を順に参拝することで、よりご利益を得られるとされています。

アクセス:

島根県鹿足郡津和野町後田409に位置し、車でのアクセスが便利です。公共交通機関を利用する場合は、津和野駅からタクシーを利用するのが一般的です。

その他:

太皷谷稲成神社周辺には、歴史的な町並みなど見どころも多く、津和野町観光と合わせて訪れるのもおすすめです。 また、近隣には、創業1931年の老舗食堂「美松食堂」があり、神社の参拝と合わせて、地元の味が楽しめるのも魅力です。

太皷谷稲成神社は、歴史、伝説、そして美しい景観が調和した、魅力あふれる神社です。願望成就を祈願するだけでなく、静寂の中で神聖な雰囲気を味わう、心癒されるひとときを過ごせる場所と言えるでしょう。

関連リンク・参考文献

[1] 稲成の言い伝え|宗教法人 太皷谷稲成神社
[2] 太皷谷稲成神社 – Wikipedia
[3] 明治維新ミステリーツアー(探索編)|事件ファイル|名探偵コナン|読売テレビ
[4] 宗教法人 太皷谷稲成神社
[5] 命婦社|宗教法人 太皷谷稲成神社
[6] 【島根】太皷谷稲成神社を徹底ガイド!お願いごとがよく叶う「お稲成さま」! |じゃらんニュース
[7] 朱塗りの社殿が美しい「日本5大稲荷」のひとつ|太皷谷稲成神社|出雲テラス|エポラコラムサイト

By ando