三重県伊勢市宮後にある月夜見宮(つきよみのみや)は、伊勢神宮豊受大神宮(外宮)の別宮として、静謐な雰囲気を湛える神秘的な場所です。外宮から北へ約300メートル、伊勢市駅から西へ約500メートルの場所に位置し、天照大御神の弟神である月夜見尊(つきよみのみこと)とその荒御魂(あらみたま)を、同じ社殿に祀るという特徴を持っています。これは、内宮別宮の月読宮とは異なる点で、月読宮では月読尊とその荒御魂は別々の社殿に祀られています。
歴史と伝説:
月夜見宮の創建は延長5年(927年)以前とされ、式内社(小)に列せられています。平安時代初期には外宮摂社の筆頭でしたが、鎌倉時代の承元4年(1210年)に別宮に昇格しました。 別宮昇格の翌年には、それまで別々の社殿に祀られていた月夜見尊と荒御魂が、一つの社殿に合祀されるようになりました。
古くからこの地は高河原と呼ばれ、稲作と深い関わりがあったと伝えられています。また、『勢陽五鈴遺響』には、豊受大御神が丹波の国から遷幸された際、三ヶ月間仮に鎮座した場所であり、神宮の神税を司る神庤(かんだち)がおかれていたと記されています。
月夜見宮と外宮の北御門を結ぶ約300メートルの道は「神路通り(かみじどおり)」と呼ばれ、月夜見尊が夜になると石垣の石を白馬に変え、豊受大御神のもとに通ったという伝説が残されています。そのため、地元の人々は夜に神路通りを通る際は、道の真ん中を避けて歩く習慣があるそうです。この伝説は、月夜見尊と豊受大御神との深い関係を示唆しています。
境内と周辺:
境内は静けさに満ち、三方を堀が囲んでいます。この堀は宮川の支流の名残と考えられています。境内には高河原神社(たかがわらじんじゃ)や稲荷社も鎮座し、ご神木の大楠も存在します。 境内社である高河原神社は、開拓にまつわる力を持つ神を祀っていると言われています。また、境内にあるお稲荷さんの鳥居は白木を使用しており、伊勢神宮の息のかかった神社の特徴を示しています。
月夜見宮の魅力:
月夜見宮は、伊勢神宮の中でもひっそりと佇む、静寂と神秘に満ちた場所です。 月の神を祀る神社として、近年は女性の参拝者も増えているようです。 月夜見尊と荒御魂を同じ社殿に祀るという独特の様式や、神路通りにまつわる伝説、そして静謐な境内は、多くの参拝者を魅了し続けています。 月読宮と比較しながら参拝することで、より深い理解が得られるでしょう。 静かな森に囲まれた境内は、都会の喧騒を忘れさせてくれる癒やしの空間でもあります。
アクセス:
近鉄伊勢市駅、JR伊勢市駅から徒歩10分程度。
開門時間: 季節によって異なりますので、事前に伊勢神宮の公式ウェブサイト等でご確認ください。
このブログ記事が、月夜見宮の魅力を少しでも伝えることができれば幸いです。 実際に訪れて、その静寂と神秘を体感してみてください。
関連リンク・参考文献
[1] 伊勢の隠れたもう1つ別宮、月夜見宮の魅力とその由緒|神社巡り444
[2] 月夜見宮 – Wikipedia
[3] 別宮・月夜見宮:斎王 05 – 偲フ花
[4] ツクヨミ(月読尊)
[5] https://iselib.city.ise.mie.jp/lib/files/14-09.pdf
[6] 神の通うみち「神路通 (かみじどおり)」を歩いてみる | 伊勢まちづくり株式会社
[7] 月夜見宮 ボロボロになっても倒れない神木のド根性に涙 【店主たみこの観光案内ブログ】
[8] 域外の別宮|神宮について|伊勢神宮