伊雑宮:志摩の地に息づく神秘と歴史

三重県志摩市磯部町上之郷に鎮座する伊雑宮(いざわのみや)。正式には伊雜宮と表記され、伊勢神宮内宮の別宮の一つとして、志摩国一宮の格式を誇る神社です。「いぞうのみや」や「いぞうぐう」の他に「磯部の宮」「磯部の大神宮さん」など、親しみを込めた呼び名も数多く存在します。近鉄上之郷駅から徒歩3分というアクセスも魅力です。年間参拝者数は約9万人にも上り、地元住民からの信仰が厚いことが伺えます。

倭姫命と白真名鶴の伝説

伊雑宮の創建には、倭姫命(やまとひめのみこと)にまつわる伝説が深く関わっています。倭姫命が伊勢神宮内宮を建立した後、神饌を奉納する場所を求めて志摩の国を巡った際、この地を訪れたと伝えられています。その時、一羽の白真名鶴(しろまなづる)が美しい稲穂を落としたことから、この地を聖地と定め、天照大御神を祀る宮殿を造営したとされています。この伝説は、毎年6月24日に行われる「伊雑宮御田植祭」にも反映されており、この祭りは日本三大御田植祭の一つとして、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。

七本鮫の伝説と御田植祭

御田植祭には、もう一つの興味深い伝説が残されています。「七本鮫」と呼ばれる7匹の鮫が、太平洋から的矢湾を通って伊雑宮の大御田橋まで列をなしてやってくるというものです。しかし、かつて一人の漁師が鮫を殺してしまったため、現在は6匹になったと言われています。御田植祭当日、海女たちは海への入水を避け、伊雑宮に参拝する習わしがあります。この伝説は、伊雑宮と海との深い繋がりを示唆しています。

歴史ミステリー:伊勢三宮説と偽書事件

伊雑宮は、歴史ミステリーにも彩られています。「伊勢三宮説」と呼ばれる説では、伊雑宮こそが伊勢の宮(磯宮)であり、天照大神を祀る本来の社であったと主張しています。内宮は星神、外宮は月神を祀っていたとする説です。しかし、この説は『先代旧事本紀大成経』という書物に記されており、後に偽書と断定され、発禁処分となりました。この事件は、伊雑宮と伊勢神宮の関係に謎めいた影を落としています。

伊雑宮周辺の見どころ

伊雑宮周辺には、佐美長神社など、見どころも豊富です。御幸道と呼ばれる、伊雑宮と佐美長神社を結ぶ道は、神が両社を行き来する道とされ、倭姫命が通った道とも伝えられています。周辺には、自然豊かな景観が広がり、散策にも最適です。

まとめ

伊雑宮は、歴史と伝説、そして神秘に満ちた神社です。倭姫命の伝説、七本鮫の伝説、伊勢三宮説と偽書事件など、数々の物語が語り継がれ、人々の信仰を集め続けています。訪れる際には、これらの歴史や伝説に思いを馳せながら、静寂に包まれた境内を散策してみてはいかがでしょうか。 神秘的な雰囲気と豊かな自然に囲まれた伊雑宮は、忘れられない旅の思い出となるでしょう。

関連リンク・参考文献

[1] 伊雑宮 – Wikipedia
[2] 【イベント】伊雑宮の御田植式 2025 | 【公式】志摩市観光協会 | 志摩観光・旅行情報サイト
[3] 伊雑宮(いざわのみや)神社参拝と御朱印めぐり・・・そして倭姫命(やまとひめのみこと)の旧跡地へ。 | 伊勢志摩.com
[4] 伊雑宮 – 志摩国一之宮に伝わる伝承の数々

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