佐賀県三養基郡みやき町に鎮座する千栗八幡宮は、古くから「肥前一宮」として崇敬を集める由緒ある神社です。その歴史は古く、神亀元年(724年)に肥前国養父郡司・壬生春成が八幡大神の神託を受けて創建されたと伝えられています。
創建伝説:千本の栗と白鳩の奇跡
創建に関する伝説は実に興味深いものです。壬生春成が千栗山で狩猟をしていた際、一羽の白い鳩が彼の弓先に止まりました。その夜、春成は夢の中で白髪の翁から千個の栗の実を授かり、「この地に八幡神を祀れ」との神託を受けます。翌朝、猟場に戻ると、一夜にして千本の栗の木が生い茂っていたというのです。この「千の栗」から「千栗」の名が、そして栗の実が逆さに生えていたことから「ちりく」という読みが生まれたとされています。この奇跡的な出来事は、八幡大神の御神威を示すものとして、今も語り継がれています。
歴史の舞台:千栗城と激動の時代
南北朝時代には、千栗八幡宮の西側に千栗城が築かれ、戦国時代には幾度となく戦乱の渦に巻き込まれました。社殿は焼失するも、天正11年(1583年)に龍造寺政家によって再興され、慶長3年(1598年)には鍋島直茂から社領二百石の寄進を受けました。明治維新まで鍋島家の庇護を受け、明治36年には県社、昭和15年には国幣小社に昇格するなど、その歴史は日本の歴史と深く関わっています。
見どころ:栄光への石段と独特の祭事
千栗八幡宮には、見どころが数多くあります。慶長14年(1609年)に鍋島直茂が奉納した石造りの肥前鳥居をくぐると、146段の石段が現れます。これは、地元出身の柔道家・古賀稔彦氏が幼少期にトレーニングに使用したことから「栄光への石段」と呼ばれ、今も多くの参拝者が登っています。
また、毎年3月15日に行われる「お粥だめし」は、日本三大粥祭りの一つとして知られています。大釜で炊いたお粥を、東西南北に分け、カビの生え具合からその年の吉凶を占うという、独特の祭事です。このお粥だめしは、1200年以上の歴史を持つとされ、近隣のみならず遠方からも多くの参拝者が訪れます。さらに、9月15日に行われる秋季大祭「放生会」では、盛大な行列浮立が奉納されます。
神秘的な境内:ご神木と境内社
境内には、樹齢450年以上のクスノキのご神木や、珍しい親子楠など、見どころが満載です。また、摂社として武雄神社や鳩森稲荷神社があり、それぞれに由緒深い歴史と信仰が息づいています。特に鳩森稲荷神社は、創建伝説にまつわる白鳩にちなんで名付けられたとされ、神聖な雰囲気に包まれています。
アクセスと情報
千栗八幡宮は、JR鳥栖駅からバスでアクセスできます。詳しいアクセス方法や、祭事のスケジュールなどは、公式ホームページやみやき町観光協会のウェブサイトでご確認ください。
千栗八幡宮は、歴史と伝説、そして自然が織りなす神秘的な空間です。訪れる人々に、静寂と安らぎ、そして不思議な魅力を与えてくれるでしょう。
関連リンク・参考文献
[1] 千栗八幡宮の御祭神・境内社について | 肥前一宮 千栗八幡宮
[2] 千栗八幡宮(ちりくはちまんぐう)-みやきsanpo みやき町観光協会 佐賀県みやき町
[3] 千栗八幡宮/佐賀県三養基郡|神社参拝家Silver
[4] 九州の神社:佐賀県・千栗八幡宮(みやき町)
[5] 千栗八幡宮 – 全国史跡巡りと地形地図
[6] 【肥前国一之宮】千栗八幡宮(ちりくはちまんぐう)戦いの神が宿ると奇跡が起きる件 – 「hinata」な?かっちゃんBLOG