島根県隠岐の島町下西に鎮座する玉若酢命神社(たまわかすのみことじんじゃ)。その歴史は古く、延喜式神名帳にも記載されている由緒ある神社です。隠岐の開拓にかかわった玉若酢命を祀り、古くは「若酢大明神」「総社明神」とも呼ばれていました。島後(どうご)の総社として、島民の信仰を集めてきました。
悠久の歴史と神秘の物語
創建時期は定かではありませんが、第十五代応神天皇の時代と伝えられています。現在の本殿は寛政5年(1793年)の建造。隠岐独特の建築様式「隠岐造り」で建てられ、茅葺屋根、千木・堅魚木の上に雀踊(すずめおどり)と呼ばれる横木が乗るなど、素朴ながらも威厳のある姿を見せています。本殿だけでなく、随神門、拝殿横の旧拝殿も国の重要文化財に指定されています。
境内には、樹齢約2000年ともいわれる巨木「八百杉(やおすぎ)」がそびえ立ちます。不死身の女性とされる八百比丘尼が植えたという伝説があり、その根元には大蛇が潜むという神秘的な話も伝わっています。この八百杉は国の天然記念物にも指定されています。さらに、神社周辺には玉若酢命神社古墳群があり、歴史の深さを物語っています。
勇壮な祭りと隠岐の文化
毎年6月5日に行われる御霊会風流(ごれえふりゅう)は、隠岐を代表する祭りの一つ。特に、馬入れ神事は圧巻です。狭い参道を馬と人が一気に駆け上がる勇壮な神事で、かつては島全体から48頭の神馬が集まったと伝えられています。現在でも8地区の神馬が参加し、その迫力ある神事は多くの観光客を魅了しています。この御霊会風流は、島根県指定無形民俗文化財にも指定されています。
億岐家と隠岐の総社
代々玉若酢命神社の宮司を務める億岐家(おきけ)は、隠岐の国造の末裔と伝えられています。億岐家住宅は、神社に隣接し、国の重要文化財に指定されています。宝物殿には、駅鈴や隠岐倉印など貴重な文化財が展示され、隠岐の歴史と文化を深く知ることができます。駅鈴は、古代律令時代に人馬を徴用する際に用いられたもので、現存するものは日本唯一と言われています。
アクセスと観光
玉若酢命神社は、西郷港から車で約3km、隠岐空港から約5kmの場所に位置しています。隠岐の島観光の際には、ぜひ訪れて、歴史と神秘に満ちたこの神社を体感してみてください。 周辺には、隠岐ジオパークの豊かな自然も広がり、充実した旅となるでしょう。
関連リンク・参考文献
[1] 玉若酢命神社 – くにたまの会
[2] 隠岐最古の神社「玉若酢命神社」見どころをご紹介します! – skyticket 観光ガイド
[3] 玉若酢命神社 社家億岐家住宅 文化遺産オンライン
[4] 玉若酢命神社 | 隠岐の宝物たち・ジオパークサイト一覧 | Oki Islands UNESCO Global Geopark
[5] 玉若酢命神社と八百杉|出雲お社倶楽部
[6] 玉若酢命神社とは?隠岐独自の神を祀る島後の総社 | りとふる
[7] 玉若酢命神社│玉若酢命神社
[8] 玉若酢命神社 随神門 文化遺産オンライン