京都府向日市向日町北山に鎮座する向日神社は、「向日明神」の愛称で親しまれる由緒ある神社です。式内社(名神大社・小社)に指定され、旧社格は府社。古くから地域の人々の信仰を集め、乙訓の歴史を静かに見守ってきました。
悠久の歴史と神々
創建は奈良時代の養老2年(718年)と伝えられています。当初は向日山に鎮座する「向神社」(上ノ社)と「火雷神社」(下ノ社)の二社でしたが、後に合祀されました。向神社は、大歳神の御子である御歳神が向日山に降り立ち、稲作を奨励したことに始まると言われています。御歳神は「向日神」と呼ばれ、五穀豊穣の神として崇敬されました。一方、火雷神社は神武天皇が大和国から山背国へ遷る際に火雷神を祀ったのが始まりとされ、祈雨と鎮火の神として信仰を集めました。延喜式神名帳には「向神社」として記載されており、その歴史の古さを物語っています。 後に火雷神、玉依姫命、神武天皇も合祀され、現在では向日神、火雷大神、玉依姫命、神武天皇の四神が祀られています。
承久3年(1221年)の承久の乱では、火雷神社の宮司が後鳥羽上皇側に加担し敗れたため、福知山市の六人部荘に逃亡。許されて戻った頃には神社は衰微していましたが、その後向神社が火雷神社を併祭する形で現在に至っています。
見どころ満載の境内
境内には、室町時代に造営された本殿が鎮座。三間社流造という建築様式で、国の重要文化財に指定されています。その美しい造りは明治神宮の本殿のモデルになったとも言われ、神社建築史においても重要な存在です。本殿だけでなく、境内にある13の建物は国登録有形文化財に指定されており、歴史的価値の高い建造物が数多く残されています。
春には約200本の桜が咲き誇り、参道は桜のトンネルに。秋には紅葉が境内を彩り、四季折々の美しい景色を楽しむことができます。桜まつりや、神幸祭・還幸祭といった季節の祭礼も盛大に行われ、地域の人々の生活に深く根付いた神社であることが分かります。 また、神社所有の「紙本墨書 日本書紀 神代巻下巻」も重要文化財に指定されています。
アクセスと周辺情報
阪急京都線「西向日駅」から徒歩約10分とアクセスも良好です。周辺には勝山公園や、水上勉の小説「櫻守」にも登場する桜の苑などがあり、神社参拝と合わせて散策を楽しむことができます。
向日神社は、歴史、文化、自然が調和した魅力的な場所です。京都を訪れた際は、ぜひ足を運んで、その神聖な雰囲気と美しい景色を体感してみてください。
関連リンク・参考文献
[1] 向日神社 – Wikipedia
[2] 向日神社 | 京都乙訓いとをかし
[3] 向日神社 | 向日市観光協会サイト
[4] 向日神社 | スポット一覧 | 京都府観光連盟公式サイト