和歌山県和歌山市和歌浦中にある玉津島神社は、古来より和歌の神として崇敬を集める由緒ある神社です。その歴史は古く、社伝によれば「玉津島の神は上つ世より鎮まり坐る」と伝えられ、創建時期は不詳ながら、上古に遡ると言われています。
三柱の祭神と和歌三神
玉津島神社の主祭神は、稚日女尊(ワケヒルメノミコト)、息長足姫尊(オキナガタラシヒメノミコト=神功皇后)、衣通姫尊(ソトオリヒメノミコト)の三柱です。さらに、明光浦霊(アケノウラノミタマ)も配祀されています。特に衣通姫尊は、和歌の道に秀でた絶世の美女として知られ、住吉大社(大阪)、柿本神社(明石)と共に「和歌三神」の一柱として数えられ、古くから朝廷や文人墨客から崇敬を集めてきました。
歴史の証人、数々の天皇の行幸と奉納
奈良時代には聖武天皇が行幸し、和歌の浦の景観を守るため、玉津島と明光浦の霊を祀ることを命じた詔を発しました。これは玉津島が文献に初めて登場する記録です。その後も称徳天皇、桓武天皇も行幸しており、聖武天皇の行幸に随行した山部赤人は、玉津島を詠んだ歌を『万葉集』に残しています。
江戸時代には、7人の天皇・上皇が宮中で法楽和歌会を催し、玉津島神社に和歌を奉納しました。これらの宸筆(しんぴつ)和歌短冊は、現在も重要美術品として大切に保管されています。他にも多くの文人墨客が訪れ、和歌の神への崇敬は途絶えることなく続いてきました。
伝説と神秘に包まれた境内
玉津島神社の境内には、数々の伝説や神秘的な要素が息づいています。神社の背後にある奠供山(でんぐやま)は、聖武天皇が登って詔を発したとされる場所で、和歌の浦の絶景を一望できます。また、境内には根上がり松など、自然の神秘を感じさせるものもあります。
現代への継承
近年では、本殿の修復や神輿の修復など、地域住民の尽力によって神社の維持・保存が進められています。2010年には、玉津島神社とその周辺が国指定名勝「和歌の浦」に指定され、その歴史的・文化的価値が改めて認められました。
アクセス
南海和歌山市駅、JR和歌山駅から和歌山バス新和歌浦行きに乗車し、「玉津島神社前」で下車するとすぐです。
玉津島神社は、歴史と伝説、そして自然の美が融合した、まさに和歌の聖地と言えるでしょう。訪れる人々に、静寂と神秘、そして歴史の重みを感じさせる、魅力あふれる場所です。
関連リンク・参考文献
[1] 和歌山県 (和歌山市) 玉津島神社 | みぞかつのぶらり散歩
[2] 玉津島神社 – Wikipedia
[3] 御由緒・歴史:玉津島神社(和歌山県紀三井寺駅) | ホトカミ – 神社お寺の投稿サイト
[4] アマテラスの妹「玉津島神社」古来より和歌の神「鹽竃神社」「三断橋」万葉集・妹背山【和歌山市】【和歌山市周辺シリーズ】|やんまあ
[5] 和歌の聖地 – 和歌の聖地・和歌の浦誕生千三百年記念大祭 公式HP
[6] 玉津島神社-歴史|玉津島神社・鹽竃神社|公式サイト
[7] アクセス|玉津島神社・鹽竃神社|公式サイト