伊賀の秘境、高倉神社:桃山時代の美と歴史の深淵

三重県伊賀市西高倉に鎮座する高倉神社。その歴史は古く、社伝によれば第11代垂仁天皇の時代、神武天皇東征に従軍した神を祀ったのが始まりと伝えられています。861年(貞観3年)には『日本三代実録』にその記述が見られ、国史見在社としての歴史も持ちます。

しかし、その後の歴史は謎に包まれています。現在の社殿は、安土桃山時代、伊賀国守護の仁木長政によって造営されたもの。本殿、八幡社、春日社の三社が美しく配置され、桃山時代の華麗な彫刻と彩色は、県内を代表する社殿として国指定重要文化財に指定されています。その美しさは、訪れた者を圧倒するほどの迫力です。ある参拝者は、その美しさにモンドリアンの絵画を連想したと記しています。

高倉神社は、単なる歴史的建造物ではありません。神武天皇東征の功神を祀るだけでなく、倉庫守護、延命長寿の霊験があるとされ、古くから地域の人々の信仰を集めてきました。特に、倉庫業の守護神として全国の倉庫関係者からの崇敬が厚く、境内には多くの奉納物が置かれています。毎年7月13日に行われる倉暉祭には、全国から物流関係者が集まり、業界の発展を祈願する神事が行われます。

さらに、高倉神社には、国指定天然記念物であるシブナシガヤや、県指定天然記念物であるアヤマスズなど、貴重な自然も存在します。境内には、高倉五名木の一つである大ケヤキもそびえ立ち、歴史と自然が調和した神秘的な空間を醸し出しています。秋の観月祭では、茄子に穴を開けて月を眺めるという独特の風習も残されています。

高倉神社の主祭神である高倉下命は、神を祀る高い倉の主とされ、その名は倉庫の起源とも深く関わっていると言われています。また、配祀神である倭得玉彦命は、卑弥呼の父親とする説もあり、邪馬台国建国の謎を解く鍵を握る神社として、歴史研究家からも注目を集めています。

高倉神社へのアクセスは、JR関西本線伊賀上野駅から約3km。少し不便な場所にあるため、静寂に包まれた空間で、ゆっくりと歴史と自然に浸ることができます。伊賀の旅の際には、ぜひ訪れて、その神秘的な魅力を体感してみてください。

関連リンク・参考文献

[1] 高倉神社のケヤキ・スギ
[2] 高倉神社

By ando