風日祈宮(かざひのみのみや)~伊勢神宮内宮の神秘に包まれた別宮~

伊勢神宮内宮の境内別宮、風日祈宮。その名は、風雨を司る神々への祈りを込めたもの。静謐な杉木立に囲まれたこの地には、古より伝わる数々の物語が息づいています。

基本情報

  • 所在地: 三重県伊勢市宇治館町
  • 祭神: 級長津彦命(しなつひこのみこと)、級長戸辺命(しなとべのみこと)
  • 社格: 皇大神宮別宮
  • 創建: 804年以前(『皇太神宮儀式帳』に「風神社」として記載)
  • 見どころ: 風日祈宮橋からの五十鈴川支流・島路川の眺め、遷宮されたばかりの美しい社殿

神風伝説と別宮昇格

風日祈宮は、元寇の際に神風を起こし、日本を守ったと伝えられています。この奇跡的な出来事により、1293年(正応6年)、それまでの末社格「風神社」から別宮へと昇格。その神威は、農耕に適した風雨をもたらす神としてだけでなく、国難を救う神としても信仰を集めるようになりました。 風日祈宮と外宮の風宮は、共に元寇における神風の功績から別宮に昇格したとされ、その歴史的背景は、この地の神聖さを一層際立たせています。

風日祈祭と五穀豊穣

毎年5月14日と8月4日には、「風日祈祭」が執り行われます。これは、風雨の災害がなく、五穀豊穣を祈る重要な祭事。風日祈宮と外宮の風宮を中心に、伊勢神宮全125社で執り行われる盛大な儀式です。 この祭りの様子は、古来より人々の生活と深く結びついていた風雨への畏敬の念、そして豊作への願いを象徴的に表しています。

神秘に包まれた風日祈宮橋

風日祈宮へは、五十鈴川支流の島路川にかかる風日祈宮橋を渡って参拝します。この橋は、宇治橋を小さくしたような造りで、新緑や紅葉の美しい景色を望む絶好のスポット。 室町時代(1498年)に最初に架けられた橋の擬宝珠には、「太神宮風宮 五十鈴川御橋明応七年戊午本願観阿弥 敬白」と刻まれているそうです。 橋からの眺めは、風日祈宮参拝のもう一つの楽しみと言えるでしょう。

隠された歴史と謎

古くは、僧や尼は内宮正宮への参拝を許されず、風日祈宮から遙拝していたという伝承も残っています。 また、内宮正宮での祈願は、本来この風日祈宮で行うのが正しいとされるなど、風日祈宮には、歴史の奥深さと謎めいた魅力が秘められています。

2014年の遷宮

2014年12月には、風日祈宮の遷宮が行われました。新しく建てられた社殿は、厳選された木材を用いた精緻な造りで、訪れる人々の心を深く揺さぶる美しさです。 遷宮は、神道の重要な儀式であり、この機会に改めて風日祈宮の歴史と神聖さを実感することができます。

アクセス

近鉄宇治山田駅、近鉄・JR伊勢市駅からバスで約20分、「内宮前」下車。 五十鈴川駅からバスを利用する場合は、本数が少ないため注意が必要です。

風日祈宮は、伊勢神宮内宮の静寂の中にひっそりと佇む、神秘的な空間です。神風伝説、風日祈祭、そして美しい社殿と自然。 この地を訪れれば、日本の歴史と信仰の深淵に触れることができるでしょう。

関連リンク・参考文献

[1] 風日祈宮(皇大神宮別宮) | 公益社団法人 伊勢市観光協会
[2] 風の市 – おかげ横丁
[3] 風日祈宮 – Wikipedia
[4] 風日祈宮(伊勢神宮 内宮別宮) | スポット・体験 | 伊勢志摩観光ナビ – 伊勢志摩観光コンベンション機構公式サイト
[5] 89.風日祈宮(かざひのみのみや)

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