廣瀬大社:大和の地に息づく水神と奇祭「砂かけ祭り」

奈良県北葛城郡河合町川合に鎮座する廣瀬大社は、古くから水神として信仰を集めてきた由緒ある神社です。式内社(名神大社)、二十二社(中七社)の一社であり、かつては官幣大社として朝廷からも厚い崇敬を受けていました。現在も神社本庁の別表神社として、その歴史と威厳を保ち続けています。

基本情報

  • 所在地: 奈良県北葛城郡河合町大字川合99
  • 主祭神: 若宇加能売命(わかうかのめのみこと)
  • 旧称: 廣瀬神社
  • 社格: 別表神社(旧官幣大社)
  • 創建: 伝・第10代崇神天皇9年
  • 例祭: 4月4日
  • 主な神事: 砂かけ祭り(御田植祭)2月11日

神秘的な創建伝説と歴史

廣瀬大社の創建は、崇神天皇9年(紀元前89年)に遡ると伝えられています。 当時、この地は「水足池」と呼ばれる広大な沼地でしたが、里長である廣瀬臣藤時に神託が下り、一夜にして沼地は陸地となり、数多くの橘が生い茂ったと言われています。この奇跡的な出来事が天皇に伝えられ、社殿が建立されたとされています。社紋の橘もこの伝説に由来しています。

『日本書紀』には、天武天皇4年(675年)に、龍田風神と共に廣瀬大社の大忌神が祀られたことが記されています。 これは、風神と水神を同時に祀ることで、風雨の調和と五穀豊穣を祈願したもので、龍田大社と廣瀬大社を合わせて参拝する「二社参り」の信仰は現在も続いています。 天武天皇13年(684年)には、天皇自ら廣瀬大社に行幸された記録も残されています。 その後も、歴代の天皇から厚い崇敬を受け、国家の安泰や豊作を祈願する重要な祭祀が行われてきました。

見どころ:長い参道と春日造の本殿

廣瀬大社は、長い参道が特徴です。参道を歩みながら、神域の静寂と自然の息吹を感じることができます。参道の両側には大木が茂り、木漏れ日が差し込む境内は、古社ならではの荘厳な雰囲気に包まれています。本殿は、優美な春日造で朱塗りの社殿が建ち並び、その美しさは訪れる人の心を魅了します。境内には、創建伝説にまつわる「水足明神」を祀る小さな社や、かつての水足池の名残とも言われる小池も残されています。

奇祭「砂かけ祭り」

廣瀬大社で最も有名なのが、2月11日(建国記念の日)に行われる「砂かけ祭り」(正式名称:御田植祭)です。 この祭りは、砂を雨に見立て、参加者同士が砂をかけ合うことで、豊作を祈願するものです。 神事としての厳かさと、砂かけ合戦の賑やかさが同居する独特の祭りは、多くの観光客を集めています。 砂をかけ合うほど豊作になると言われ、厄除けの効果もあるとされています。 祭りの様子は、まるで砂の雨が降り注ぐかのようで、迫力満点です。

その他

廣瀬大社は、水神信仰の中心地として、水田を守る神、五穀豊穣の神として、古くから人々の生活に深く関わってきました。 境内には、様々な摂末社があり、それぞれに信仰を集めています。 また、廣瀬姓の発祥の地としても知られています。 静寂に包まれた境内、歴史を感じさせる社殿、そして独特の砂かけ祭り。廣瀬大社は、大和の歴史と文化を肌で感じることができる貴重な場所です。 ぜひ、一度訪れてみてください。

関連リンク・参考文献

[1] 神社人 – 廣瀬大社(廣瀬神社)
[2] 廣瀬大社 トップページ
[3] 廣瀬大社【アソビュー!】
[4] 廣瀬大社 – Wikipedia
[5] 廣瀬大社-歴史
[6] 奈良のむかしばなし/奈良県公式ホームページ
[7] 廣瀬大社|水の神で砂かけ祭りは必見|見どころ紹介【魅力いっぱい奈良】 | 魅力いっぱい 奈良
[8] 廣瀬大社-砂かけ祭
[9] 水を司る衣食住の守護神|廣瀬大社|宮司/樋口俊夫|特別講話17|祈りの回廊 2016年秋冬版|特別講話|祈りの回廊 [奈良県 秘宝・秘仏特別開帳]
[10] 廣瀬神社 | 奈良県歴史文化資源データベース | 奈良県歴史文化資源データベース「いかす・なら」

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