東京都北区岸町に鎮座する王子稲荷神社は、古くから「関東稲荷総社」として崇敬を集めてきた由緒ある神社です。東国三十三国稲荷総司の称号を有し、徳川将軍家の祈願所としても栄え、江戸庶民にも深く愛されてきました。境内には、国指定重要美術品である「額面著色鬼女図」や谷文晁の「龍図」など貴重な文化財も所蔵されています。
狐の伝説と「王子狐の行列」
王子稲荷神社には、古くから狐にまつわる数々の伝説が残されています。最も有名なのは、大晦日の夜、多くの狐が近くの榎(現在は装束稲荷神社が鎮座)に集まり、装束を整えて王子稲荷神社に初詣をするという言い伝えです。歌川広重の「名所江戸百景」にも描かれたこの光景は、江戸時代から名所として知られていました。
この伝説を現代に蘇らせたのが、平成5年(1993年)から続く「王子狐の行列」です。装束稲荷神社から出発した狐のお面と裃姿の人々が、お囃子の音色と共に王子稲荷神社へと練り歩く、幻想的なイベントです。当初は20~30名だった行列も、今では300名規模にまで発展し、多くの見物客を集める北区の冬の風物詩となっています。深夜に行われる神秘的な行列は、伝説の世界を彷彿とさせ、多くの人の心を魅了しています。
落語にも登場する「狐の穴跡」
境内には、かつて狐が住んでいたとされる「狐の穴跡」が残されています。この場所は、落語「王子の狐」の舞台としても有名で、神社の歴史と物語性を深く感じさせてくれます。
火防けの御神徳と初午祭
王子稲荷神社は、火防けの御神徳でも知られています。毎年2月の初午の日には、江戸時代から続く凧市が開かれ、「火防けの凧守」が授与されます。大火に見舞われた江戸の町では、風を切る凧が火災除けの縁起物として信仰され、現在もその伝統が受け継がれています。
アクセスと周辺情報
王子稲荷神社は、JR王子駅や都電荒川線王子駅前駅から徒歩圏内に位置し、アクセスも良好です。周辺には飛鳥山公園や音無親水公園など、散策に最適なスポットも点在しています。神社を訪れた際には、周辺の観光地も合わせて巡ってみるのも良いでしょう。
まとめ
王子稲荷神社は、歴史、伝説、そして現代のイベントが融合した、魅力あふれる神社です。狐の伝説、神秘的な「王子狐の行列」、火防けの御神徳、そして貴重な文化財など、見どころ満載です。北区を訪れた際には、ぜひ足を運んで、その魅力を体感してみてください。
関連リンク・参考文献
[1] 東京「鉄道沿線の神社を訪ねて」〜都電荒川線編|王子稲荷神社 – 東京都神社庁
[2] 王子稲荷神社 | 東京都北区観光ホームページ