鰐鳴八幡宮:涙するワニの伝説と歴史を刻む古社

山口県山口市上小鯖に鎮座する鰐鳴八幡宮。その名の由来は、平安時代中期、大分県宇佐八幡宮から勧請された際に起こった、切ない伝説に隠されています。

涙するワニの伝説

宇佐八幡宮から神霊を迎えに行った一行は、山口湾から椹野川を遡り、鰐石と呼ばれる場所に上陸しました。 この時、神様をお慕いして同行していたワニが、神様との別れを惜しみ、悲しみのあまり鳴き声を上げたと言われています。この「ワニの鳴き声」が、神社の名前「鰐鳴八幡宮」の由来となったのです。 このワニは、単なる動物ではなく、当時の海上生活者を象徴する存在だったという説もあります。神様の御神徳を伝える、象徴的なエピソードと言えるでしょう。 現在でも、山口市には「鰐石町」という地名が残っており、かつて鰐石が船着場として重要な役割を果たしていたことを物語っています。

歴史と建造物

鰐鳴八幡宮は、寛弘元年(1004年)の創建と伝えられ、式年祭もこの年を基に執り行われています。 本殿と拝殿は、それぞれ貞享3年(1686年)と寛政3年(1791年)に改築されたもので、山口市の指定有形文化財に指定されています。 境内には、柊社(主祭神は大国主命、少彦名命、蛭子命)など、他の社も祀られています。 また、境内には約150mの参道があり、季節によって桜や彼岸花が咲き誇り、美しい景観を創り出しています。

年中行事

鰐鳴八幡宮では、例祭(10月最終日曜日)、春祭(4月16日最近の日曜日)、祈年祭、新嘗祭など、様々な祭事が行われています。 特に、御廻在(田頭神幸祭・7月土用三日目)や花和里若宮社御神幸(4年に一度、例祭当日)といった特殊神事も注目に値します。 これらの祭事を通して、地域の人々の信仰と、古くからの伝統が受け継がれていることが分かります。

小鯖八幡宮との関係

鰐鳴八幡宮は、小鯖八幡宮という通称でも親しまれています。 これは、ご鎮座地である上小鯖地区に由来するものです。 また、祭礼時に御符奉持役の小俣氏子が、八幡宮へ御符を返さず、小俣の地に奉斎して小俣八幡宮を創立したという歴史も存在します。

神秘と歴史が織りなす、魅力的な場所

鰐鳴八幡宮は、涙するワニの伝説、歴史ある建造物、そして盛んな祭事など、多くの魅力を秘めた神社です。 山口を訪れた際には、ぜひこの歴史と神秘に満ちた場所を訪れて、その魅力を体感してみてください。 静寂の中に秘められた、古の物語に耳を澄ませてみてはいかがでしょうか。

関連リンク・参考文献

[1] 山口市フィルムコミッション|ロケーション紹介|鰐鳴八幡宮|
[2] 鰐鳴八幡宮本殿・拝殿 附 宮殿 附 棟札 – 山口市の歴史文化資源 – 山口市ウェブサイト
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[4] 鰐鳴八幡宮(山口県山口市上小鯖)の歴史、観光情報、所在地、アクセス │ 周防山口館【大内庭園】
[5] 鰐鳴八幡宮 通称 小鯖八幡宮

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