開口神社:堺の歴史と神秘が息づく「大寺さん」

大阪府堺市堺区に鎮座する開口神社(あぐちじんじゃ)は、地元の人々から「大寺さん」の愛称で親しまれる、古くからの歴史と数々の伝説に彩られた神社です。堺の街の発展を見守り続けてきたこの神社の魅力に迫ります。

基本情報

開口神社は、南海本線「堺駅」から徒歩約10分、阪堺線「大小路駅」または「宿院駅」から徒歩約5分の場所に位置しています。主祭神は、航海の神、塩を司る神として知られる塩土老翁神(しおつちのおじのかみ)、疫病除災・開運の神である素盞嗚神(すさのおのかみ)、そして国土開発・発展の神である生国魂神(いくたまのかみ)の三柱です。安産、開運厄除、交通安全の御利益があるとされ、多くの信仰を集めています。

創建と「開口」の名の由来

社伝によると、開口神社の創建は西暦200年頃、神功皇后の三韓征伐からの帰途に遡ります。皇后が石津浜に上陸し、戦勝祈願を行った際、老漁師が赤目魚(鯛)を献上したことを吉兆と喜び、「八重潮路に向かう地に塩土老翁の御魂を祀るべし」との詔により創建されたと伝えられています。

「開口」という珍しい社名の由来には諸説ありますが、一つには、神功皇后が神饌を奉納するまで口を開かなかった塩土老翁神が、初めて口を開いたという伝説に由来すると言われています。 また、和泉堺南荘の氏神として、海に向かって門戸を開いていることに由来するという説もあります。

「大寺さん」と呼ばれる所以と神仏習合の歴史

開口神社が「大寺さん」と呼ばれるのは、かつて境内に広大な寺院が存在したことに由来します。天平16年(744年)には行基によって薬師如来を本尊とする密乗山念仏寺が建立され、その後、平安時代には空海も宝塔を建立するなど、神仏習合の道場として活況を呈しました。 江戸時代まで寺僧によって社務が行われていましたが、明治時代の神仏分離令により念仏寺は廃寺となりました。しかし、その通称は今もなお地元の人々に親しまれています。

堺の歴史を彩るエピソードと伝説

  • 三ツ茄子の神紋のミステリー
  • 開口神社の神紋は、全国的にも珍しい「三ツ茄子」です。 元々は巴紋でしたが、白鳳年間(680年前後)に氏子の中から一つのガクに茄子が三つできたことをおめでたいと奉納したことから、巴紋が茄子に変わったと伝えられています。 江戸時代の公家、正親町公通が三ツ茄子の絵に和歌を添えて奉納した記録も残されており、その珍しさと吉祥性がうかがえます。

  • みむらん坊伝説
  • かつて開口神社には大きな楠があり、そこには「みむらん坊」と呼ばれる天狗が住んでいたという伝説があります。 「1日で千里の道を往復できる」強者だったみむらん坊は、大和吉野の大天狗との問答に敗れ、一夜にして吉野へ飛び去り、朱塗りの桜門を献上したと伝えられています。 残念ながらこの楠は堺大空襲で焼失してしまいましたが、今も語り継がれる興味深い話です。

  • 白一龍神社の竜神伝説
  • 境内には「白一龍神社」という全国でも珍しい歯の神様が祀られています。 この祠の中には井戸があり、一匹の竜神が住んでいて、毎年初秋に昇天して大雨を降らせ、農民を喜ばせたという伝説が残されています。

  • 金龍井の由来
  • 神社西門の入口には「金龍井」と呼ばれる古い井戸が残されています。 昔、この地にあった海会寺の和尚に救われた竜神が、お礼に清水を湧かせたものと伝えられています。

  • 影向石(ようごうせき)
  • 境内には、神仏がお姿を現される御座の石とされる「影向石」があります。 塩土大神が行基菩薩と法談された時や、弘法大師とお会いになられた時に腰かけられた石とも伝えられており、緑がかった二つの石が並んでいます。

  • 千利休や与謝野晶子とのゆかり
  • 開口神社は、茶聖として知られる千利休や、歌人・与謝野晶子など、堺を代表する文化人とも深い関わりがあります。 特に、与謝野晶子が幼少期に遊んだ境内の樟を見て詠んだ歌の歌碑が建立されており、未来ある女性たちへの願いが込められています。 また、与謝野晶子の生誕の地である堺にちなみ、「晶子恋歌みくじ」も用意されています。

見どころと年間行事

境内には、本殿の他にも多くの摂社・末社が鎮座しており、それぞれに異なる御利益があります。 また、武野紹鴎好みの茶室と伝えられる「無礙庵」や、使い古した扇を供養し芸事の上達を祈願する「扇塚」など、見どころが満載です。

年間を通して様々な祭事が行われており、特に9月中旬に行われる例祭「八朔祭(はっさくさい)」では、堺市内でも最も古いとされる「ふとん太鼓」が奉納され、多くの人で賑わいます。

堺の歴史と文化、そして神秘的な伝説が凝縮された開口神社。ぜひ一度訪れて、その奥深い魅力を肌で感じてみてはいかがでしょうか。

関連リンク・参考文献

[1] ご祭神・由緒|開口神社(大寺さん)|大阪堺市にある安産・婚礼・開運厄除の神社
[2] 【堺市堺区】開口神社(あぐちじんじゃ/通称:大寺さん) 創建以来1700年以上続く 末永い縁を大切にする歴史の社:│さかにゅー
[3] 堺市の開口神社⛩️「大寺」として親しまれるパワースポットの魅力
[4] 開口神社(堺市堺区) ・「大寺さん」とも呼ばれる神功皇后勅願と伝わる式内社
[5] 開口神社
[6] 開口神社(あぐち神社) | 観光スポット・体験 | OSAKA-INFO
[7] 開口神社 – 沙界妖怪芸術祭
[8] 堺の隠れたパワースポット!開口神社(あぐちじんじゃ)の魅力に迫る – 神社旅
[9] 開口神社 – Wikipedia
[10] 堺のお香・奥野晴明堂
[11] 開口神社 | 大阪・なにわの神さん・仏さん
[12] 開口神社
[13] 開口神社|海神祀る堺の大寺さん、摂社めぐりも忘れずに(大阪名所巡り) | めいしょメグル
[14] 開口神社
[15] 開口神社 | 伝説と史実
[16] 【(一)開口神社】
[17] 境内案内|開口神社(大寺さん)|大阪堺市にある安産・婚礼・開運厄除の神社
[18] 開口神社
[19] 開口神社 ..::産土神名帳::..
[20] 開口神社 [大阪府]-人文研究見聞録
[21] 堺市の御朱印(開口神社・菅原神社・宿院頓宮) – 御朱印JAPAN
[22] 開口神社 (大阪府堺市堺区甲斐町東) – 神社巡遊録
[23] 開口神社の御朱印・アクセス公式情報 (大阪府大小路駅) | ホトカミ

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