奈良県磯城郡田原本町に鎮座する鏡作神社(かがみつくりじんじゃ)。正式名称は鏡作坐天照御魂神社(かがみつくりにますあまてるみたまじんじゃ)で、古くから鏡づくりの神として信仰を集めてきた由緒ある神社です。近鉄田原本駅から徒歩約15~20分、緑豊かな鎮守の森の中に、朱塗りの美しい本殿が佇んでいます。
鏡作神社と八咫鏡の伝説
鏡作神社の起源は、第10代崇神天皇の時代まで遡ります。天照大神が天の岩戸に隠れた際、岩戸から出てくるきっかけとなった八咫鏡(やたのかがみ)。崇神天皇は、この神聖な八咫鏡を宮中に祀ることをためらい、まずは大和の笠縫邑(かさぬいむら)に祀ることにします。そして、宮中に新たに祀るための鏡を製作するよう、この地にいた鏡作りの職人集団「鏡作部」に命じました。この時、試作として作られた鏡が、鏡作神社の御神体として祀られるようになったと伝えられています。この伝承は、平安時代の『和名抄』にも記されています。
三神と鏡作部の信仰
鏡作神社では、天照国照彦火明命(あまてるくにてるひこほあかりのみこと)、石凝姥命(いしこりどめのみこと)、天糠戸命(あめのぬかどのみこと)の三神が祀られています。特に石凝姥命は、八咫鏡を作ったと伝わる神として知られ、鏡作部の祖神として崇められてきました。そのため、鏡やガラスに関わる人々、そして技術向上を願う美容師などからも、多くの参拝者を集めています。
境内で見られるもの
境内には、朱塗りで三間社春日造の本殿の他に、摂社の天照大神社などがあり、鋳鏡を洗い清めたとされる鏡池も存在します。また、江戸時代に鏡池から出土した「鏡石」は、古代の鏡製作時に鏡面の研磨に使用されたと考えられており、当時の鏡作りの様子を想像させてくれます。さらに、神社では非公開ですが、貴重な社宝「三神二獣鏡」を所蔵しています。これは、三角縁神獣鏡の内区が残された精巧なもので、愛知県の東之宮古墳出土の鏡と同笵鏡(どうはんきょう)とされるなど、学術的にも高い価値を持っています。拝殿には、九州の平原遺跡から出土した八咫鏡に比定される国宝内行花紋八葉鏡(ないこうかもんはちようきょう)のレプリカが祀られており、秋の例祭の宵宮には神楽が奉納されます。
謎めいた鏡作神社の配置と周辺の神社
鏡作神社周辺には、鏡作伊多神社、鏡作麻気神社など、「鏡作」の名を持つ神社が点在しています。これらの神社の配置は、不思議な三角形を形成しており、古代の鏡作りの拠点としての歴史と、何らかの関連性を示唆しているのかもしれません。また、近隣には唐古・鍵遺跡があり、青銅鋳造の遺物が出土していることから、鏡作りの技術が伝来した可能性も考えられます。
現代への繋がり
鏡作神社は、単なる歴史的遺構ではなく、現代にも深く繋がる存在です。鏡やガラス、美容業界の人々から厚く信仰されており、技術向上や美への祈りを込めた参拝が絶えません。古代の鏡作りの技術と信仰が、現代に受け継がれていることを実感できる、神秘的な場所と言えるでしょう。
アクセス情報
- 住所:奈良県磯城郡田原本町八尾816
- 交通:近鉄田原本駅から徒歩約15~20分
- 駐車場:無料駐車場あり(5台)
このブログ記事が、鏡作神社の魅力と歴史を少しでも伝えることができれば幸いです。ぜひ、実際に訪れて、その神秘的な雰囲気を体感してみてください。
関連リンク・参考文献
[1] Just a moment…
[2] YouTube
[3] 鏡作神社(田原本町)|奈良県観光[公式サイト] あをによし なら旅ネット|田原本町|生駒・信貴・斑鳩・葛城エリア|神社・仏閣|神社・仏閣
[4] 鏡作坐天照御魂神社 – 奈良寺社ガイド
[5] やまとの神さま│奈良まほろばソムリエの会
[6] 鏡作神社に鎮座!鏡の神様 | 奈良の宿大正楼
[7] 鏡作神社(田原本町)|奈良県観光[公式サイト] あをによし なら旅ネット|田原本町|生駒・信貴・斑鳩・葛城エリア|神社・仏閣|神社・仏閣
[8] 八咫鏡鋳造「鏡作神社(鏡作坐天照御魂神社)/鏡作麻気神社」【田原本町シリーズ】【鏡作シリーズ】|やんまあ
[9] 鏡作神社三神二獣鏡 (神獣鏡の図像学) デジタル邪馬台国 箸墓=天の岩戸仮説
[10] 謎の鏡作神社の三角形、2つの御魂神社と三輪山の関係を探る – たっちゃんの古代史とか