山津照神社:悠久の歴史と謎に包まれた古墳

滋賀県米原市能登瀬に鎮座する山津照神社。その歴史は古く、延喜式神名帳にも記載されている式内社であり、かつては県社として崇敬を集めてきました。神紋は菊と桐、主祭神は国常立尊です。創建年代は詳らかではありませんが、天平神護2年(767年)には既に存在し、近江の地6戸が神封として奉納されたという記録が残っています。その後も、天武天皇の時代には奉幣を受け、文徳天皇や清和天皇からも神階を賜るなど、朝廷からの厚い崇敬を受けていたことが伺えます。中世には「青木の宮」と呼ばれ、現在の社殿は明治時代に麓にあった青木神社から遷座されたものです。

息長氏と神功皇后の謎

山津照神社は、古代豪族・息長氏の祖神を祀る神社として知られています。境内には、明治15年に参道拡張工事中に発見された山津照神社古墳が存在します。この前方後円墳は、神功皇后の父である息長宿禰王の墓と伝えられ、県指定史跡に指定されています。古墳からは、銅鏡、金銅製冠、鉄刀、馬具など数多くの副葬品が出土しており、息長氏の繁栄と高い地位を示す貴重な文化財となっています。神功皇后の陵墓とする説もありますが、息長宿禰王の墓とする説が有力です。これらの出土品は、息長氏が大陸との交流を持っていた可能性を示唆しており、歴史研究においても重要な意味を持っています。

武家奴振り:春の祭礼

山津照神社では、毎年5月5日の例祭に「武家奴振り(ぶけやっこぶり)」という独特の祭事が行われます。これは、かつて青木神社の祈祷札を京都御所へ奉納する際に、行列の先導役として行われていた「奴振り」が起源とされています。江戸時代から明治4年頃まで行われていたものが、戦後まもなく復活し、現在では山津照神社の春の祭礼を彩る重要な行事となっています。様式化された独特の動きは、見る者を魅了します。

その他の見どころ

山津照神社には、本殿、拝殿の他に、青木神社、若宮八幡神社、春日社、北野社といった摂末社も鎮座しています。また、拝殿近くには巨大な露出岩盤があり、古代の祭祀場であった可能性も指摘されています。これらの要素が合わさり、山津照神社は歴史と神秘に満ちた場所となっています。

アクセス

山津照神社は、車でのアクセスが便利です。駐車場は乗用車5台分程度あります。公共交通機関を利用する場合は、JR北陸本線坂田駅から徒歩で約50分です。

山津照神社は、歴史の重みと神秘的な雰囲気を併せ持つ、魅力的な神社です。訪れる際には、その歴史と文化に触れ、静寂の中で神聖な空気を体感してみてください。

関連リンク・参考文献

[1] 神社紹介 > 滋賀県の神社 > 滋賀県神社庁
[2] 山津照神社 | かむながらのみち ~天地悠久~

By ando