滋賀県竜王町の歴史と神秘に包まれた苗村神社

古の息吹が今も感じられる滋賀県蒲生郡竜王町に鎮座する苗村神社。国宝の西本殿と重要文化財に指定された東本殿を有するこの神社は、延喜式神名帳に「長寸神社」として記載されている格式高い式内社です。近郷33ヶ村を氏子に持つ総社として、地域の人々から長きに渡り篤く信仰されてきました。

由緒ある歴史と神々

創建年代は詳らかではありませんが、社伝によれば垂仁天皇の時代に祖霊信仰から始まったと伝えられています。東苗村古墳群の地に、地名「那牟羅」と同音の長寸神社(「長」は最高位、「寸」は村の古字)として建立された東本殿は、平安時代には延喜式神名帳に記載され、式内社としての地位を確立しました。

安和2年(969年)には、大和国金峯山から国狭槌尊(くにのさつちのみこと)が勧請され、西本殿が造営されました。寛仁元年(1017年)には、朝廷に門松用の松苗を献上したことから、後一条天皇より「苗村」の称号を賜り、現在の社名となりました。

天文5年(1536年)には後奈良天皇から「正一位」の神位を授かり、織田信長からも馬鞍一具、太刀七振りが寄進されるなど、皇室や有力者からの崇敬を集めてきました。明治14年には郷社、大正9年には県社に昇格し、現在に至ります。

主祭神は、那牟羅彦神(なむらひこがみ)、那牟羅姫神(なむらひめがみ)、国狭槌尊(西本殿)。東本殿には大国主命、事代主神、素盞嗚尊が祀られています。那牟羅彦神と那牟羅姫神は、この地に工芸技術と産業をもたらした神として、地域の発展に大きく貢献したと伝えられています。国狭槌尊は、国土開発や五穀豊穣、そして子守りの神として信仰を集めています。

国宝・西本殿と重要文化財の数々

苗村神社の最大の魅力は、なんといっても国宝に指定されている西本殿です。鎌倉時代後期の建築様式を受け継ぎ、その荘厳な姿は訪れる者を圧倒します。徳治3年(1308年)の棟札には、建保5年(1217年)の修造と徳治3年の再建が記されており、歴史の重みを感じさせます。

東本殿をはじめ、楼門、八幡社本殿、十禅師社本殿、神輿庫など、多くの建物が重要文化財に指定されています。境内には、重要文化財である木造不動明王立像も安置されており、神仏習合の名残を今に伝えています。

神秘と伝説

苗村神社の周辺からは、古墳時代の遺物が出土しており、古くからこの地に人々が暮らしていたことを示しています。日本書紀には、新羅の王子・天日槍命が近江国吾名邑(あなむら)に滞在したという記述があり、苗村の地名はこれに由来する可能性も指摘されています。須恵器の技術に長けた渡来人が、この神社の創建に関わっていたという説も興味深いところです。

33年に一度行われる式年大祭は、近郷33ヶ村の氏子が集う大規模な祭りで、地域にとって重要な行事です。次回の開催は2046年と、まだ先ですが、その盛況ぶりは想像に難くありません。

アクセスと情報

苗村神社は、JR東海道本線近江八幡駅から近江鉄道バスでアクセスできます。静寂な自然に囲まれた境内は、都会の喧騒を忘れさせてくれる癒やしの空間です。歴史と神秘に満ちた苗村神社に、ぜひ一度足を運んでみてください。

関連リンク・参考文献

[1] 苗村神社について|苗村神社
[2] 神社紹介 > 滋賀県の神社 > 滋賀県神社庁
[3] 苗村神社 – Wikipedia
[4] 閑古鳥旅行社 − 苗村神社西本殿
[5] 苗村神社 | 滋賀県観光情報[公式観光サイト]滋賀・びわ湖のすべてがわかる!
[6] 苗村神社 | 滋賀 おすすめの人気観光・お出かけスポット – Yahoo!トラベル
[7] 国宝!重文だらけ「苗村神社」東本宮・西本宮両参り【滋賀湖東シリーズ】【湖東シリーズ】【竜王シリーズ】|やんまあ
[8] 新近江名所圖會 第276回 国宝と重要文化財の神社本殿-苗村神社(なむらじんじゃ)-蒲生郡竜王町綾戸 – シガブンシンブン 新近江名所図会

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